イギリス料理と言えば「マズイ」というイメージが定着していますが、そんな先入観を持ってイギリス料理を食べてみると、「意外と美味しいじゃん!」の繰り返しで、私の中の答えは「イギリス料理は美味しい」という方向で固まりつつある今日です。
ところで、イギリス料理と言えばフィッシュアンドチップスやイングリッシュブレックファストが有名ですが、イギリス料理の中でも親しみのある家庭料理に「パイ料理」が多くあるのはご存知でしょうか。
フィッシュパイ、シェパーズパイ、コテージパイ、ステーキパイなどがありますが、私がイギリスで初めて出会ったパイとは、とあるティールームのメニューの中にあった「フィッシュパイ」でした。ランチを食べるために入ったティールームでフィッシュパイを注文したのですが、運ばれてきた料理が全く想像と違い「どうしてこれがパイなの!?」と驚きを隠せなかったことをとてもよく覚えています。
そして、イギリスには日本人が想像する「パイ」とは全く違う「パイ」が存在することに気づいたのでした。
今回はそんな話を一つ。。。
パイの種類
イギリスの家庭料理の中には「パイ料理」がいろいろあります。
「パイ」と聞くと、日本人がイメージするのは「パイ生地」で包まれていたり覆われている料理ですが、ここイギリスではそれが「パイ生地」であるとは限らないのです。
どうゆうことかというと、パイ生地には2種類あるそうで、日本人感覚でのパイ生地とはパイの中でも「折りパイ」と呼ばれているもので、バターを挟みながら生地を伸ばしていったものを指し、生地が何層にもなった折り重なったシート状になっていて、焼き上がりはふわっと膨らんで軽くサクサクした食感になります。英語ではPuff Pastry(パフペイストリー)といいます。
他にも「練りパイ」と呼ばれているものがあり、生地は層にはなっておらず、甘くないビスケットのような食感でサクサクとしています。アメリカンパイとも呼ばれているそうですが、英語ではFlaky Pastry(フレイキーペイストリー)というそうです。(ここではあまり聞きませんが)
一般的にパイと呼ばれているのはこの2種類のようなのですが、イギリスにはもう一つのパイが存在します。
それは「マッシュポテト」です。パイ生地の代わりに、料理の上にマッシュポテトで覆い、オーブンで焼いたものもパイと呼びます。
生地が層になっていない練りパイでも「え?これもパイ?」って思ったのですが、マッシュポテトでパイとは・・・ビックリですよね。
イギリスのパイ料理は大きく分けて3種類
イギリスのパイ料理は大きく分けて3つあります。
1つ目は、大皿で作り取り分けるメインディッシュのパイ料理
2つ目は、ランチやおやつに最適な、手軽に食べられるファストフード感覚のパイ
3つ目は、おやつや食後に食べる甘いデザート系のパイ
メインディッシュのパイ料理
フィッシュパイ(Fish Pie)
Photo by Jeremy Keith
一般的には、2種類くらいの魚(タラやサーモンなど)やシーフード(エビなど)を白ワインやホワイトソース系で調理し、表面をマッシュポテトで覆ってオーブンで焼いた料理です。
各家庭でレシピが違ったりしますが、うちではフィッシュパイ用のお魚セット(3種類のお魚が一口大に切られているパック)と野菜(玉ねぎやブロッコリー)を塩コショウで調理し、ホワイトソースは使わず生クリームを足してオーブン用の器に移しマッシュポテトで表面を覆いオーブンで焼きます。
シェパーズパイ(Shepherd’s Pie)、コテージパイ(Cottage Pie)
Photo by Alpha
羊のひき肉で作るのがシェパーズパイ、牛のひき肉でつくるのがコテージパイです。
作り方はほぼ同じですが、使うお肉が違うので味がかなり違ってきますね。
ひき肉に玉ねぎやスパイスを入れて炒めオーブン用の器に移し、マッシュポテトで覆いオーブンで焼いた料理です。
オーストラリアなどではミートパイと呼ばれているそうです。こちらも各家庭でレシピがあるようで、味付けにトマト缶を使うものや、グレイビーソースでを使うものもあります。
ステーキパイ(Steak Pie)
ビーフシチューをパイ生地(Flaky Pastry)で覆い、オーブンで焼いたものです。
お肉屋さんでオリジナルのステーキパイを売っているところもあり、パイ生地をFlaky PastryかPuff Pastryか選べたりもします。
出来上がったものを買って家でオーブンで温めてランチに食べることが多いです。
キドニーパイ(Kidney Pie)、ステーキ&キドニー・パイ(Steak and Kidney Pie)
調理方法はステーキパイとほぼ同じですが、使用するお肉の種類が異なります。
キドニーパイとは、牛肉の代わりに腎臓を使ったパイ。ステーキ&キドニーパイは、牛肉と腎臓の両方を使っています。
キドニーは腎臓ですが、風味としてはちょっとレバーに似た感じです。臓物系の苦手な人はステーキパイが無難です。
ランチに最適な手軽に食べられるファストフード感覚のパイ
ポークパイ(Pork Pie)、ゲームパイ(Game Pie)
Photo by Orion Montoya
ポークパイは、豚肉を細かく切り(ひき肉ではなく小さいお肉がゴロゴロ入っている感じ)玉ねぎ・りんご・スパイスなどと合わせたフィリングとアスピックと呼ばれるゼラチンのスープをパイ生地(Flaky Pastry)で包みオーブンで焼いたもの。
ゲームパイは、作り方はほぼ同じですが使うお肉が狩猟肉(うさぎ、キジ、鹿など)です。「ゲーム肉(狩猟肉)」の意味が分からず食べると、後で罪悪感があるかも!?
冷やしてゼラチンを固め冷たいまま食べるのが特徴です。(お好みでオーブンで温めて食べてもOK)
お弁当やおつまみにもなりるライトスナックですね。
ソーセージロール
パイという名前ではありませんが、ソーセージをパイ生地(Puff Pastry)で包んで焼いたもの。
このミニバージョンは、子供たちのお誕生会には定番の食べ物です。
忙しそうなビジネスマンが、ランチタイムにソーセージロールやポークパイを歩きながら食べている姿もよく見かけます。
デザート系のパイ
アップルパイ(Apple Pie)
皆さんご存知のアップルパイですが、こちらのパイ生地はPuff PastryとFlaky Pastryのどちらも見かけます。
↑上の写真はPuff Pastryのアップルパイですが、スーパーなどで冷凍したものを買うことができます。安価で(1ポンドでも買えます!)オーブンに入れるだけでアツアツを食べれるところが魅力です。
Photo By scott feldstein
Flaky Pastryのものは丸い形のものが多いです。ティールームなどでよく見かけます。写真は冷凍でよく見かけるタイプで、長方形なのが特徴です。丸いものより場所も取らず、切り分けるのも簡単なので気に入っています。
日本やアメリカのアップルパイよりリンゴが酸っぱくレーズンで甘味をだしていて、甘すぎることもなく爽やかな味のイメージがあります。アツアツのアップルパイに冷たいアイスクリームを乗せて一緒に食べるのが人気です。
レモンパイ(Lemon Pie)
パイ生地(Flaky Pastry)にレモンの酸味の効いたクリームを乗せ、その上をメレンゲで覆いオーブンで焼いたお菓子です。
爽やかな酸味のクリームとふわふわのメレンゲの相性が抜群。紅茶と一緒にどうぞ!
ミンスパイ(Mince Pie)
ミンスとは本来はひき肉の意味なのですが、このミンスパイはお肉は使いません。
このミンスパイのミンスは数種類のドライフルーツを小さく切ったもの指します。
ドライフルーツのミンスをFlaky Pastryで包んでオーブンで焼いたもので、主にクリスマスに食べます。クリスマス時期になるとスーパーにたくさん並びます。
たっぷりのドライフルーツとシナモンのフィリングがクセになる味ですよ。
どうしてマッシュポテトでパイなの?
どうしてパイ生地を使わずにマッシュポテトを使った料理をパイと呼ぶのか、、、それは裕福でない家庭の知恵だったようです。
パイ生地で使う小麦粉やバターは貧困家庭では贅沢品だったようで、安くてお腹いっぱいになるジャガイモが代わりに使われたことから家庭料理として広まったそうです。
イギリスでは主食がジャガイモというのは珍しくなく、ご飯(お米)はもちろんのことパンも食べず、おかずとジャガイモというスタイルの食事も少なくありません。
そこでマッシュポテトを使うことは全く違和感がなかったのでしょうね。
そうです。例えば「今日はフィッシュパイ!」という日は、フィッシュパイだけでご飯とおかずのセットという意味にもなります。副菜を用意する家庭もありますが(野菜のボイルなど)、フィッシュパイならフィッシュパイだけで夕食が成立するのです。
私にはちょっと物足りない訳でして。。。。いつもご飯のおかずとしてフィッシュパイをいただいています笑
赤ちゃんの離乳食だってパイを使います
出典:Tesco
赤ちゃんの離乳食で、フィッシュパイやコテージパイ、よく見かけます。
大人が食べる料理の取り分けではマッシュポテトがメインでちょっとそこにお魚やお肉をつぶしたりスープを混ぜたりして赤ちゃんに与えているようです。
市販のパックされた離乳食でも、フィッシュパイやコテージパイが売っています。
最初見たときはビックリしましたが、日本人にとっての肉じゃがみたいなものなのかなと思ったら不思議ではありませんね!
スーパーなどのお店で手軽に買えます
出典:Tesco
スーパーではレディーミールと呼ばれているコーナーで、レンジでチンするだけの食品がたくさんあり、その中にパイ料理もちゃんとあります。もちろん冷凍食品でも。
ベイカリー(パンやベイク物を売っているお店)でも、ポークパイ、ソーセージロールなどが置いてあり、ランチとしてや小腹が空いたときのおやつとしてパパッと買って食べれるのはとても重宝します。特に子供はお腹が空いた!となるとすぐに食べたいですからね。
ピクニックに出かけるときなど、お弁当やおにぎりはもちろん売ってませんから、ポークパイやソーセージロールをお弁当がわりにもっていくのも良いですよ!
缶詰に入ったパイもあります
イギリスのスーパーでは、缶詰に入ったステーキパイなどが売っているんですよ。
お味はどうなのか・・・残念ながら私はこれを試す勇気はなく、まだ食べたことはありません><
実は日本のAmazonで買えますので、興味のある方はぜひ試して感想を聞かせてください!
缶を開けて耐熱皿に移し、オーブンや電子レンジで温めてどうぞ~!
*創業150年という、老舗のイギリスの「FRAY」という会社からの商品です。
イギリスではどこのスーパーでも置いています。お土産にも良いかも!?
最後に
スターゲイジーパイ(Stargazey Pie)
Photo by Krista
こちらのスターゲイジーパイをご存知でしょうか。
イギリスの不味そうな料理の代表として話題に上がることもしばしばですが、ニシンやサバといった臭みのある青魚の頭がぶっ差さった状態の衝撃的見栄えのパイです。お魚たちは星を見上げているらしいです。
これはイギリスのコーンウォール発祥の料理の一つで、特別な祝祭の日にだけ食べる料理だそうです。
「魔女の宅急便」に出てくる「ニシンとカボチャのパイ」に似ていると日本では一気に有名になってしまいましたが、実はイギリスではイギリス人でもほとんどこのパイの存在を知りません。(コーンウォールの人でも知らない人がいました)
少数のこのパイの存在を知っている人は「日本人から聞いた」という人が多く、「このパイを食べたい!」という日本人のために、メニューに入っているレストランを探したが全く見つからなかった、という話もネットではよく見かけます。
どうやらこのパイはロンドンなどのレストランやパブで、特別な日(クリスマスなど)に限定メニューとして現れることがあるらしいですが、イギリス人でもなかなか食べれないようです。
もしこのメニューを見かけたらぜひ挑戦してみてくださいね!!
この記事を書く前に、ネットでパイのことを少し調べたりしたのですが、日本のレシピサイトで簡単にイギリスのパイレシピが見つけられて日本でも手軽に作れることを知り嬉しい驚きでした!
私はイギリスに来るまでこれらの食べ物の存在は全く知らなかったので作ろうと思ったこともなかったのですが・・・イギリスの味が好きな方もたくさんいらしゃりるのですね。
もし気になる方は、日本語でも検索で簡単にレシピが見つかりますので、どうぞ試してみてくださいね!
オーブンさえあれば本場の味を(もしかしたらそれ以上の味を)再現できるかと思います!
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