紅茶の国「イギリス」では、いつでもアフタヌーンティーのような豪華なティータイムを楽しんでいるイメージがありますよね。
センスの良いカップ&ソーサでダージリンをストレートで飲んでいるイメージ。
ですが、実際は家庭で飲む紅茶はほぼマグカップになみなみ注いだたっぷりのミルクティーなんですよ。
イギリスの家庭で飲まれる紅茶の96%がミルクティーなんですって。
イギリスが舞台のドラマや映画でも、何かにつけ「とりあえずティーを」という流れになっていますね^^
毎日何度もミルクティーを飲むイギリス人ですが、選ぶ茶葉や入れ方にこだわりを持っている人が多く、紅茶を語りだすと止まらないことも。
そんなイギリス人の紅茶、いや今回はミルクティーについてのお話です。
イギリス流ミルクティーの美味しい入れ方
イギリスでは、最も親しまれて飲まれている飲み物がミルクティーだそうです。
家庭でも職場でも喫茶店でも、ミルクティーは欠かせない存在です。
イギリス人家庭で毎日飲まれているこのミルクティーですが、その入れ方は至ってシンプル。
- まずはケトルに新鮮なお水を入れ、スイッチオン。
- 紅茶のティーバッグをポットの中に入れて準備しておき、ケトルでグツグツと沸騰させたお湯を一気に入れます。
- 寒い冬はティーコジーなどをかぶせて温度が下がらないようにし、3分ほど蒸らしておきます。
- その間にマグカップを準備しておきます。
- 蒸らしが終わったら一気にマグカップに注いでいきます。
- お好みの量の牛乳を入れればミルクティーの出来上がりです。
- マグカップにあらかじめミルクを入れて待機させる方法もあります。どちらでもお好みで。
毎日、朝から晩まで一日何度も飲むミルクティーですから、ポットやマグカップを温めておくなんてことはあまりしません。
ティーコジーも使わない家庭の方が多いかもしれないですね^^
現在は、リーフティーを使っている家庭も少ないです。
何度も飲むのにはやっぱりティーバッグが便利なんですよね。
一人分だけ入れる場合は、ポットは使わずそのままカップにティーバッグをポン、そこに熱湯を注ぎます。
ティーバッグと牛乳を予めマグカップに入れて準備しておき、ケトルの熱湯を注ぐ人も多くいますよ!
でも、熱湯を入れた後に、ティーバッグをバチャバチャ振ったりスプーンで押しつぶしたりして蒸らし時間をケチることはしません。
ゆっくりビスケットを準備しながら待つのです。
入れるミルクは、必ず冷蔵庫から出した冷たい牛乳。
温めておいたりしません。温めると牛乳の臭みが出るので、あくまでもフレッシュにこだわります。
イギリス人のミルクティーは、日本人のミルクティーよりミルク多めで飲むのが一般的です。
冷たい牛乳を入れて紅茶が冷めちゃわないの?と思いますよね?
多少冷めちゃうかもしれないですが、大きなマグカップになみなみ注ぐので、気になるほど冷めているという感じはありません。
しかも、お水のようにグビグビと飲むので、むしろ最初から飲みやすい熱さという感じです。
そして、ミルクティーのお供にはビスケットは欠かせません。
ビスケットをミルクティーに浸して食べるのが、イギリス流ミルクティーの飲み方の一つのようです^^
《紅茶を美味しく入れるポイント》
- 酸素たっぷりの新鮮な水を使う。水道水が一番。ペットボトルの水は酸素が少ないので、ボトルを振って酸素を含ませればGood!
- やかんかケトルでグツグツと沸騰させた熱湯を使う。保温機能のあるポットからのお湯は使いません。
- カップ、またはポットに、あらかじめ茶葉を入れておき、そこへ熱湯を投入。
- ティーバッグはギュウギュウ絞ったりトントン・ブンブン振り回さない。渋みが余計に出ちゃいます。
- リーフティーなら、茶葉がジャンピングするよう一気に熱湯を入れ、ポットの中で茶葉が舞い踊るようにする。
- 3分ほどじっくり蒸らすこと。冷めないようにティーコジーを使用すると良いです。
- カップにミルクを入れてから紅茶を注ぐか、紅茶を入れてからミルクを追加するかはお好みで。
- 紅茶のお供、ビスケットがあるとなお美味しく紅茶を飲むことができます♪
ミルクティーに合う紅茶とミルクは?
紅茶の渋みを抑えてまろやかにし、スッキリと飲むことができるミルクティー。
香りもコクもミルクに負けない茶葉というのが美味しいミルクティーになる条件となります。
ミルクティーに合う紅茶の種類は、アッサム、ケニア、ウバが一般的に好まれている茶葉です。
ブレンドティーの種類でいうと、イングリッシュブレックファスト、スコティッシュブレックファスト、アイリッシュブレックファストが、ミルクに負けないコクと味を出せる紅茶なので美味しくいただけますよ。
好みは分かれますが、アールグレイのミルクティーもなかなかの人気です。
意外やアールグレイの香りとミルクがマッチし、好きな人にはたまらないお味になるとか。
逆に、ダージリンなどのさっぱり系の紅茶は、香りも味もミルクに負けてしまうためあまり相性は良くないようです。
但し、自分好みの味ならば、ダージリンでも何でもいいと思いますよ。
いろいろな種類の紅茶で試しながら自分が好きな味を見つけるのも楽しいと思います。
ミルクティーに入れるミルクは、冷蔵庫にある牛乳です。
コーヒーフレッシュのようなクリームタイプはダメですよー!!クリームでは脂肪分が多すぎで紅茶が負けちゃいます。
イギリスでは「フルファットミルク」といって、脂肪分の多い牛乳がミルクティーには美味しいといわれています。
このフルファットミルク、イギリスでは一番一般的な牛乳なのでどこのスーパーでも売っているのですが、日本で売っている一般的な牛乳は脂肪分が低いので同じような味にならないようです。
もしイギリスで飲むような味にしたいならば、濃厚なタイプを選ぶといいでしょう。
牧場などで飲めるような甘味のある脂肪分の高い牛乳です。脂肪分は4.0以上のものがいいです。
紅茶に入れる前に温める必要はありません。温めると臭みが出たりタンパク質が固まったりするので避けましょう!
こだわってイギリスのミルクティーに近づけるならば、お水も硬水で試してみてくださいね!
ミルクが先か、紅茶が先か論争
イギリスでは、ミルクティーを入れる時にミルクと紅茶、どちらを先にカップに入れるのが正しいかという論争が、実は130年以上も続いていたというお話、ご存知でしたか?
ミルクを先に入れる「Milk in First」、ミルクを後から入れる「Milk in After」どちらかが美味しいのかを130年以上も論争し、そして研究し続けていたそうです。
そして世界で最も紅茶を飲む英国人の母国イギリスで、最も権威のある英国王立化学協会が判決を下すまでに至ったのです。
ついに2003年に決着。出した答えば「Milk in First の方が美味しい!」でした。
ミルクを先に入れることで、急激な変化温度上昇を避けられ、ミルクに含まれるたんぱく質の変性が少なくなることで、ミルクは後で入れるよりも先に入れる方が美味しくなるということです。
しかし、この検証法に納得しない学者もいるようで、まだまだこの論争は続いていく模様です。
こんなミルクティーの歴史からか、今でもミルクを先に入れる「Milk in first」でミルクティーを入れている人も多くいるのですよ。
「紅茶よりもミルクを先にカップに入れる」って、日本人には馴染みのない入れ方ですよね^^
イギリス人である私の夫も、夫の家族・親戚たちも、Milk in first派です。
但し、美味しさの追及というよりも、ケトルのお湯が沸くまでの間に、マグカップを並べ、直接ミルクボトルから適当なミルクを入れて準備しておける=ミルクポットを使わなくて済む=洗い物が減る、というのが理由らしいです。
どちらにしても、美味しさの保証付きならばこのままMilk in firstでオッケー!という感じですね!^^
イギリスでは「ミルクティー」は通じません
実は、イギリスのティールームやレストランなどでの注文時、「Milk tea」と言っても通じません。
日本人が多い観光地ではもしかしたら通じる可能性もありますが、それは日本人観光客に慣れているか、または勘が良かったかのどちらかです。
ミルクもティーも英語なのに不思議ですよね・・・。
ではどう言えばいいのでしょう、イギリスでミルクティーは「Tea with milk」というのです。
ストレートティーも同じです。「Straight tea」と言っても通じません。
何も入れないストレートの紅茶は「Black tea」と言います。
注文するときは、「Can I have a cup of black tea please」でOK。
しかし、「Can I have a cup of tea with no milk please」というイギリス人も多くいます。
ほとんどの人がミルクティーを注文するという前提で考えるとこうゆ注文の仕方になるのでしょうね~。
ちなみにミルクティーは「White tea」と言っても通じます。
ポットでサーブしていることもあるので、「a cup」なのか「a pot」なのかも付け加えてくださいね。
イギリスでは「ロイヤルミルクティー」は存在しません
日本人なら誰もが知っている「ロイヤルミルクティー」ですが、実はイギリスで「ロイヤルミルクティー」は存在しません。
えーーっ?イギリスのロイヤルファミリーが飲んでいる特別なミルクティーという意味じゃなかったのー??とビックリしますよね。
日本では「午後の紅茶」でお馴染みの缶やペットボトル、日東紅茶ではロイヤルミルクティー用の茶葉まで売っているし、知らない人はいないと思われるこの「ロイヤルミルクティー」は、実は日本で作られたある意味、和製英語の一つなのです。
実はこのロイヤルミルクティー、日本の京都のとある喫茶店で生まれたものだそう。
1930年、京都三条通に本店を構える「リプトンティーハウス」で、創業者である福永兵蔵氏が「ティールームにマッチするメニュー」をコンセプトにデザートを考案。名前に「ロイヤル」をつけたシリーズとして販売された商品の一つが「ロイヤルミルクティー」でした。
1965年に東京銀座に出店する際にこのロイヤルミルクティーは看板商品となり、瞬く間に日本中に広まったといいます。
ロイヤルミルクティーとは、少量の熱湯で茶葉を開かせておき、その後、ミルクパンで熱した牛乳の中に茶葉を入れて煮出すもの。
濃く出た紅茶の味と香り、そして牛乳のコクが味わえます。
このような煮出し紅茶を、英語では「シチュードティー(Stewed tea)」というそうです。
牛乳100%ではなく、水と牛乳でお好みの比率で作ると美味しいそうですよ。
砂糖をたっぷり入れて、アイスでもホットでも美味しいロイヤルミルクティーですが、イギリスで味合うことは難しいようです。
イギリスでは「アイスティー」はメジャーではありません
イギリスのカフェでは、ここ数年でやっと冷たい飲み物が飲めるようになってきました。
氷入りのお水や、冷蔵庫にあるジュースやペットボトル入り飲料はもちろん前からありました。
しかし、「アイスティー」や「アイスコーヒー」が普通のカフェなどで飲めるようになったのは、本当ここ数年です。
元々、寒い国のイギリスですから、冷たい飲み物はあまり好まれていませんでした。
日本でもお年寄りは夏でも冷たい飲み物は飲まない人多いですよね。
季節は関係なく、一年中温かいミルクティーが飲まれています。
しかしここイギリスでも、地球温暖化の影響か、スターバックス進出のおかげか、夏になると「アイスティー」や「アイスコーヒー」がメニューに現れることが多くなってきました。
しかしアイスティーといっても、残念ながら「アイスミルクティー」ほとんど見かけません。
主にフルーツティー、アップルティーやマンゴーティーなどが多いです。
しかしこれも全国展開しているチェーン店などの話で、郊外の個人経営のティールームなどでは難しいかなと思います。
おじいちゃん、おばあちゃんたちで賑わっている昔ながらのティールームでは、季節でメニューが変わるということもあまりなく、冷たい飲み物=ジュースかお水、というのが基本です^^
イギリスでは「レモンティー」もメジャーではありません
ミルクティーの話ではないですが、ティーつながりでもう一つ。
イギリスでは「レモンティー」はメジャーではないのです。
ほとんどのイギリス人は「レモンティー」の存在を知りません。
街にあるティールームやカフェには必ず紅茶がありますが、紅茶を注文すると聞かれるのは、ほぼ「ミルクはいるか、いらないか」だけ。
在英13年目になりますが、「ミルクかレモンか」と聞かれたことは一度もありません。
これは「レモンティー」というメニューもなければ、存在もあまり知られていないから。
レモンティー派の日本人にはちょっと残念ですよね。
ただし、ロンドンなどの大きな都市で日本人観光客が多い場所では、レモンティーが注文できる場所もあります。
メニューになくても、レモンティーをリクエストするとスライスレモンを出してくれるところもあります。
日系スーパーや中華スーパーなどでは、日本や中国のレモンティーのペットボトルが売ってますので、それを買って飲むということもできます。
しかし、イギリスの田舎の地域では、お店でレモンティーは注文できないと思った方がいいですね。
どうしてレモンティーがないのか、、、恐らくですが、イギリスのお水は硬水だからかなと。
硬水れ入れた紅茶は、基本的に真っ黒。
ストレートティーをブラックティーと呼ぶほどですから。
レモンティーのイメージって、薄茶色の紅茶にレモンを浮かべるイメージですよね。
でもイギリスのお水で入れた真っ黒の紅茶にレモンを浮かべても、日本のような美味しさは出せないからだと思います。
実際に試してみたことはないのですが・・・私、元々レモンティーが苦手でしたので。
スーパーで売っている紅茶で、フレーバーがついた紅茶がたくさんあるのですが、その中でレモン・ジンジャーフレーバーの紅茶というのはあります。
アールグレイも、柑橘系のベルガモットの香りをつけたものですから、紅茶と柑橘系の相性は良いはずですね。
ちなみに、レモンティーの発祥はアメリカだそうです。
日本にレモンティーが普及したのは、アメリカのサンキスト社が日本のレモン消費を上げるために、アメリカでの紅茶の飲み方の一つであるレモンティーを紹介したのがきっかけだそうです。
さいごに
イギリスのミルクティーについて語ってしまいましたが、イギリス人にとっては毎日の生活の一部となっている紅茶ですので、深く考えて飲んでいる人はあまりいません。
結婚してイギリスに来て、夫の親と同居した数か月の間、家で何をしたらいいのかわからず落ち着かなかった私を気にしてか、義母は紅茶を入れるたびに「紅茶入れるけど一緒にどう?」と声をかけてくれました。
紅茶を飲み終わるまでの何気ない会話をしながら、少しずつ打ち解けた気がします。
今でも義両親の家に行くたびに、「さぁ、紅茶でもいれましょうか」と、せっせとみんなの紅茶を入れてくれます。
家族の会話ができる時間に紅茶が必要なんですね、きっと。
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